喉頭粘膜上皮の化学受容細胞クラスターの発生

掲載日2026.03.16
最新研究

獣医学部
横山拓矢(山本欣郎)
獣医解剖学?組織学

岩手大学獣医学部横山拓矢、山本欣郎らの研究グループは、ラット喉頭蓋粘膜上皮の化学受容細胞クラスターの発生について、免疫組織化学とコンピューターによる立体再構築により解析しました。本研究は、ラット喉頭の化学受容細胞クラスターが、出生後どのように形成?成熟するかを解析したものです。その結果、クラスターは出生時には存在せず、生後2日ではじめて出現し、生後7日から生後3週にかけて急速に増加することがわかりました。クラスター内のGNAT3細胞とSyt1細胞は少なくとも8週まで増加しており、P2X3陽性感覚神経線維は早期からこれらの細胞と接触しており、離乳期の喉頭防御反射成熟と密接に関連することが示唆されました。

背景

哺乳類の喉頭粘膜には多くの呼吸防御反射を引き起こす感覚受容器が存在し、その一つとして喉頭?咽頭部の化学受容細胞クラスターが知られています。化学受容細胞クラスターは味蕾に似た構造を示し刺激物や異物の検知に重要な役割を果たすと考えられていますが、出生後の発達過程、特にクラスターの形成、細胞構成、神経支配の確立時期などは十分に解明されていません。本研究は、化学受容細胞クラスターの形成過程を免疫組織化学的手法によって体系的に明らかにしたものです。

研究内容

本研究では、出生後0日から8週齢までのラット喉頭粘膜全体を採取し、GNAT3(味細胞II型マーカー)、Syt1(味細胞III型マーカー)、P2X3(求心性神経線維マーカー)に対する多重免疫蛍光染色により、化学感受性細胞クラスターの分布?形態?細胞構成?神経支配を詳細に解析しました。共焦点レーザー顕微鏡による三次元再構築を行うことで、細胞の形態変化やクラスター形成過程を定量的?立体的に評価するとともに、クラスター数と構成細胞数を計測し、成長に伴う増加の特徴を統計学的に比較しました。これらの結果から、発達段階に応じたクラスターの形成機序と成熟プロセスを包括的に解明しました。

生後5週(a, b)および8週ラットで見られた化学受容細胞クラスター。緑はGNAT3細胞、赤はSyt1細胞、白はP2X3感覚神経終末を示す

研究成果

本研究により、化学感受性細胞クラスターは出生時には存在せず、生後2日で初めて出現することが明らかになりました。クラスター数は生後3週齢で最大に達した後は増加が止まり、以後は細胞数の増加と形態的複雑化が進むことが示されました。構成細胞数は初期には2–3個と少なく単純な形態を示しますが、成長に伴いGNAT3陽性細胞は多方向に突起を延ばし、Syt1陽性細胞もクラスター周縁で特有の配置をとるなど、成熟した味蕾に類似した高度な構造が形成されました。また、P2X3陽性感覚神経終末は生後2日の時点で既に化学受容細胞と接触しており、非常に早期に神経との接触が確立されることが示唆されました。これらの結果から、クラスターの出現と数の安定化は離乳時期と一致しており、固形食摂取に伴う化学刺激の増加や呼吸防御反射の成熟と密接に関係することが明らかとなりました。

今後の展開

電子顕微鏡レベルの形態形成、生理学的研究による機能的な評価に展開することにより、呼吸防御反射のメカニズムへの関与が明らかにされることが期待されます。

掲載論文
題目:Postnatal developmental changes in the laryngeal chemosensory cell clusters of rats (ラット喉頭の化学受容細胞クラスターの生後発達)
著者:Sayed Sharif Abdali (岩手医科大学?医学部), Kanna Miyazaki (宮崎莞那?岩手大学共同獣医学科?卒業生), Takuya Yokoyama(横山拓矢?岩手大学獣医学部), Nobuaki Nakamuta(中牟田信明?岩手大学獣医学部), Tomoyuki Saino(齋野朝幸?岩手医科大学医学部), Yoshio Yamamoto* (*責任著者:山本欣郎?岩手大学)
誌名:Journal of Anatomy
公表日: 2026年2月26日
DOI:https://doi.org/10.1111/joa.70128

本件に関する問い合わせ先
獣医学部共同獣医学科  横山拓矢
ytakuya@iwate-u.ac.jp