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【プレスリリース】角膜上皮細胞由来の新たな無限分裂細胞の作製と全遺伝子解析に成功

掲載日2021.6.10


概要

岩手大学、国立がん研究センター、ロート製薬(株)からなる研究グループは、ヒト角膜上皮細胞に3つの特殊な遺伝子を導入することによって新たな無限分裂細胞を作製することに成功しました。
また、今回作製に成功した角膜上皮細胞からの無限分裂細胞(角膜K4DT細胞)について、全遺伝子の発現を解析し、従来法により作製した無限分裂細胞より元々の細胞の性質をより保持するなどの新たな知見が得られました。
今回得られた知見は、ヒトを始めとする様々な動物の研究の応用につながるものです。

本研究成果は、Nature Publishing Groupが発行する国際学術誌「Scientific Data」に凤凰体育平台3年5月7日付で公開されました。

背景

近年、iPS細胞といった様々な機能を付加した細胞が出現しています。一方、ヒトや動物の体から採取した元々の細胞(野生型細胞)は、試験管内で培養すると一定回数の細胞分裂後に細胞老化という現象により、細胞分裂が停止してしまいます。そのため、研究材料としての利用は限られます。
この課題を解決するため、細胞にウイルス遺伝子を導入して無限分裂を誘導する方法が用いられており、これまではSV40癌遺伝子が用いられることが一般的でした。しかしながら、SV40癌遺伝子を使用すると細胞中の遺伝子や染色体が変化し、元々の細胞(野生型細胞)から性質が異なってしまという問題がありました。

岩手大学理工学部福田智一教授らの研究グループは、この問題に対処するため、変異型サイクリン依存性キナーゼ(CDK4)、サイクリンD1遺伝子(CyclinD1)、テロメア逆転写酵素(TERT)という3つの特殊な遺伝子を組み合わせて細胞の無限分裂を誘導する方法の研究を行ってきました※1。

研究成果

これまでの研究成果を基に、国立大学法人岩手大学理工学部福田智一教授、冨田浩史教授、菅野江里子准教授、折本愛特任助教(研究当時)、大学院総合科学研究科古谷凱修士課程1年、Tao Wu同1年、国立研究開発法人国立がん研究センター先端医療開発センター清野透プロジェクトリーダー、ロート製薬株式会社の研究グループは、ヒト角膜上皮細胞に変異型サイクリン依存性キナーゼ(CDK4)、サイクリンD1遺伝子(CyclinD1)、テロメア逆転写酵素(TERT)という3つの特殊な遺伝子を導入することによって、ヒト角膜上皮由来の無限分裂細胞(角膜K4DT細胞)の作製に成功しました。

角膜K4DT細胞とSV40癌遺伝子を用いた従来法で作製した無限分裂細胞を、次世代シークエンサーを用いて全遺伝子の発現パターンの比較を行ったところ、細胞周期に関連する遺伝子の発現について、角膜K4DT細胞が元々の細胞と最も似た性質を示すことを明らかにしました※2。

さらに、①元々の細胞、②角膜K4DT細胞、③SV40癌遺伝子を用いた無限分裂細胞(培養に血清を含めたもの)、④SV40癌遺伝子を用いた無限分裂細胞(培養に血清を含めなかったもの)、の4種の遺伝子発現パターンの比較を行いました。複数種類、かつ、複数の培養条件の無限分裂細胞を全遺伝子レベルで発現を比較検討した研究は世界初です。

その結果、
(1)角膜K4DT細胞は、従来のSV40癌遺伝子による無限分裂細胞と比べ、元々の細胞の性質を最も保持※3
(2)SV40癌遺伝子による無限分裂細胞は、培養時の血清の有無という2つの条件で大きな差異は無し。つまり、遺伝情報を司るDNAの違いが培養条件よりも細胞の性質を大きく左右することが明らかになった
(3)細胞周期及びタンパク質分解経路が最も重要な働き
という新たな知見が得られました。

※1 全遺伝子発現解析で元の細胞の性質を残した無限分裂細胞作製法が明らかに(2020年12月14日付プレスリリース)
/cat-research/2020/12/003796.html

※2 元々の細胞、角膜K4DT細胞、SV40癌遺伝子による無限分裂細胞の全遺伝子の発現パターンの比較結果:角膜細胞K4DT細胞の遺伝子発現(赤色)の性質が最も元々の細胞に近い。

  • ※2.png



※3 元々の細胞、角膜K4DT細胞、SV40癌遺伝子による無限分裂細胞の性質の差異を3次元的に表したもの:角膜細胞K4DT細胞が最も元々の細胞に最も近い。

  • ※3.png

各細胞の性質の差異の動画データ(岩手大学公式Youtubeチャンネルへジャンプします)
https://youtu.be/CMVqUmluFnE

掲載論文

掲載紙:Scientific Data
論文名:The transcriptome of wild-type and immortalized corneal epithelial cells
著 者:
古谷 凱 岩手大学大学院総合科学研究科 修士課程1年
Tao Wu 岩手大学大学院総合科学研究科 修士課程1年
折本 愛 岩手大学理工学部化学?生命理工学科 特任助教(研究当時)
菅野 江里子 岩手大学理工学部化学?生命理工学科 准教授
冨田 浩史 岩手大学理工学部化学?生命理工学科 教授
清野 透 (国研)国立がん研究センター先端医療開発センター プロジェクトリーダー
ロート製薬株式会社基礎研究部門
福田 智一 岩手大学理工学部化学?生命理工学科 教授

公表日:2021年5月7日
URL:https://www.nature.com/articles/s41597-021-00908-9
DOI:10.6084/m9.figshare.14093807

本件に関するお問い合わせ

岩手大学理工学部 化学?生命理工学科 生命コース教授 福田 智一(ふくだ ともかず)
電 話:019-621-6375
メール:tomof009(末尾に@iwate-u.ac.jpをつけてください)